欲のままに、どうぞ姫様。





甲高い笑い声。
美しくもまだ、幼さの残る姫様。

金の装飾が施された宮殿に。
声を上げて、両手を広げ、上を向いて。
笑う貴女様は。
なんと、かわいらしい。

この華美な宮殿に、お似合いの 美術品 。


「なんて、汚らわしいのかしら!」


貴女様。
見下して下さる目元は、妖艶でいらっしゃる。


「ワタクシの御洋服が、汚れてしまったじゃない!」


そうなのです。
恐れ多くも、私の汚らわしい血のせいで、姫様のドレスを汚してしまったのです。

申し訳ありません。そう声に出したくとも、口からは血が噴き出すばかり。

ですが気付いたのです。


姫様は、怒ってなどはいない。という事。
汚れた事など、現状をより一層愉しむ為の、愉快な罵倒の一つ。


貴女様。
とても愉しんでおられて。
貴女様。
昔の貴女様では想像もつかない程、笑っておいでで。

貴女様。
昔の貴女様は、歌う事を忘れた、鳥籠の中の金糸雀  カナリアのようで御座いました。


それが、今。

私の醜態を見る事で、これほど大きく笑っていらっしゃる。

他人の醜態を笑うのは、少々趣味が悪いようで御座いますが。

私、嬉しくてなりません。


姫様!
私を見下して下さる目元は、本当に妖艶でして。
舌なめずりする仕草に、私は。私は!


ああ、姫様!
直接、私のハラワタを掴みましたら、お手が汚れてしまいます。


姫様?
斯様かようなものを食しては、お体に悪うございます。


ですが、姫様。
私、やはり嬉しくてなりません。
貴女様がこのように、自分から何かしようと働き掛けた事。
その相手に、私を選んで下さった事。
貴女様が、愉しそうになさっている事。
何もかも、私には嬉しくてなりません。



姫様。
私のお味は如何ですか?
どうぞ幾らでも。
召し上がって下さいませ。





あ、姫様。

貴女様の小さな手に
そのナイフは

大き過ぎましたね。






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浮かんだ言葉をつらつらと。

実際。
腹が裂けて、口から血を噴出していたら。
こんな悠長にお姫様を想ってなんか居られないよなー…www

ナイフは、被害者の彼が持ってきたようです。



2007/12/7 完成。