マリア




妹は15歳を迎えるのが精一杯だろう。
それが医師の判断。

「お兄ちゃん。まりあのご病気。よくなりますか?」

今、8歳。
あと、長くて7年。

「良くなるよ。お医者様だっているんだから。」
「ほんと?」
「ああ、元気になったら色んな所に連れて行ってあげる。」
「まりあ、ふぇありぃさん(妖精)に会いに行く。」
「元気になったら、会いに行こうね。」

僕は。
どれだけ、嘘がつけるだろうか。
この、たった一人の。弱い存在に。


「お兄ちゃん。マリアのご病気いつ治るの?」

もう、10歳。
あと、長くて5年。

「もうすぐ良くなるよ。マリアはちゃんとお薬飲んでるし。」
「ほんと?」
「本当。あ、マリア、髪を結ってあげる。」
「お兄ちゃん。マリア、新しいおリボンが欲しい。」
「ああ、買ってこよう。」

小さい妹は、細かった。
黒くて長い髪は美しく、肌の白さを際立たせた。
何もかもが、僕の理性を掻き乱す。


「お兄ちゃん。マリアはどんな病気なの?」

とうとう、13歳。
あと、長くて2年。

もう、
嘘がつけなかった。

お兄ちゃん。 マリアはどこが悪いの?
お兄ちゃん。 病気はいつになったら治るの?
お兄ちゃん。 ママとパパはどこに行ったの?
お兄ちゃん。 フェアリーはほんとにいるの?
お兄ちゃん。 お願いを叶えてくれるの?
お兄ちゃん。 だったら、マリアの病気を治してくれるかな?
お兄ちゃん。 マリアはお兄ちゃんが大好き。
お兄ちゃん。 お兄ちゃんは?





お兄ちゃん。 どうしてマリアのお洋服を脱がすの?
お兄ちゃん。 どうして、そんな所を触るの?
お兄ちゃん。 何をするの?


お兄ちゃん。



「マリア。マリアの病気は治らないんだよ。」
「…?」
「マリアは、もうすぐ死ぬんだよ。」

妖精なんて居るわけないだろ。

「父さんも、母さんもお前を見捨てて出て行ったんだ!!」



「…だから、もう。お前には、僕しか居ないんだ。」

そうだ。僕しかいない。


「お兄ちゃん。マリア、死にたくない。」
「ああ。」
「死にたくないよ…。」
「そうか。」
「…一人にしないで。」

一人にしないよ。
だから。

「マリア。一人にしないから。だから。
 お兄ちゃんのいう事に”嫌”って言っちゃ駄目だよ。」
「…。」
「解った?」
「…はい…。」



「じゃあ、服を全部脱いで。
 お兄ちゃんに見せるんだ。」


「…はい。」







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2005/08/31
ノートに書き走ったものに、多少加筆修正した物。
なんで、書いたか覚えていない…。
もう、歳かな?