第二話




「なあ、悪の魔女って何なんだ?」
「…ぷぅ?」

もう夏が近い昼休み。
聖夜とプー太郎(仮)はこそこそと話ていた。
もちろん他の生徒に見られないように、校舎裏という死角で暑さからも逃げながら。

素朴な疑問だ。
あまりにも安直なネーミング。
悪の魔女。
まあ、なんとなく。いや、かなり解る。
逆に解りやす過ぎて、解らない。
そこんところ、詳しく説明してくれ。


「悪の魔女は正義の『マジカルマスター』を亡き者にし、世界を闇で包もうとする悪い魔女っぷぅ。
 つまり、聖夜のライバル。
 『マジカルマスター』のいるところ、『マジカルクイーン』がいるっぷぅ!」



・・・・・・まじかるくいーん

「そのネーミングセンスどうにかなんねぇの?」
「ぷぅ!?」
「しかも、そんな日曜の朝に放送してそうな戦隊ものみたいな設定も、胡散臭い。」
「Σぷぅっ!?」

「やっぱり、嫌だ。」


そんな胡散臭い話。振り回されてたまるか。
何より、クイーンって事は女だろ。
女性と戦えって何だよ。


それよりも。


遡ること、昨日の晩。
このプー太郎(仮)に言われるがまま、変身した。
一応確認だ。
変身したらどうなるのか。
いきなりの戦闘で、ぶっつけ本番の変身なんて恐ろしいから。

あんなに嫌がっていたのに、どうして変身するんだ。とかそういう突っ込みは止して欲しい。
何事にも最悪の事態を想定し、対処法を用意したくなる性格なんだ。
別に、断り切れなかったとか、マジで怪人に襲われたりしたらどうするんだとか脅迫された訳でもないし!
ましてや、屈服した覚えもない!!



諸事情あったが、変身した。


足がスースーした。



魔女っ子だから当然といえば、当然なのだろうが。
なにもこんなお約束な服装は勘弁してほしい。


これほどまでにミニスカートは風通しがよく、頼りないものとは。


その上見た目は完全に少女だ。
女性じゃない、女の子だ。
確実に三つか四つは幼くなったし。
身長だって20cmは低くなったと思う。
髪だって明るい茶髪だし。これが目の色まで明るい茶色に。いや、黄色か?


なによりショックなのは、

ピンクで統一された服!


ミニスカなのにフリルがヒラヒラして、とにかくミニスカなんだ!
細心の注意をはらったって、一歩踏み出すたびに動く。つーか、めくれる。
走ったりしてみろ、下着が見える!
嫌だ。すっっっっっげえ嫌だ!!!
その上頭には重力を無視した、リング。
そしてまたヒラヒラした布。

なんなんだ、コレは!!

一体、予想視聴者年齢層は幾つだ!
誰を狙ってこのデザインなんだ!
メインターゲットを教えてくれ!!
つーーーーか、誰にも見られたくねぇえよぉぉお!!!!



とにかく、これだけ変わっていれば誰が見ても俺だとは解らない。
そこだけは安心した。(だからって見られたくはない!)




「で、その“マジカルクイーン”ってのは、誰なんだ?」

さっき嫌だと言ったばかりなのに詮索するのは、やはり、
何事にも最悪の事態を想定し、対処法を用意したくなる性格なんだ。
だって、クイーンとか言っておきながら、ゴリラみたいな奴だったらどうするんだ!!!
それに、敵が解っていれば対処法が見えてくる。

変身・攻撃・防御・特殊召喚やらいろいろ、知らないものなど無い!と豪語していたこの丸い生物なまもの
自信たっぷりに言いはなつ。


「わからないっぷぅ。」



・・・・ゴリラみたいな奴だったら、どうするっ…!!



「何だよ、それ…。じゃあ、誰と戦えっていうんだよ。」
「だから、“マジカルクイーン”っぷぅ!」
「その“マジカルクイーン”が誰だって言ってんだ!」
「わからないっぷぅ!!」


「解らねぇもん押し付け…!!!



「先輩?」
「Σっ…!」


とっさにピンクの生物を鞄の奥に押し込んだ。
何だか、豚のような鳴き声が聞こえた気もするが、今の現状を考慮したら無視だ。

まず、声だけで驚いた。
こんな校舎裏という湿気た場所には似つかない声。
なんていうか消え入りそう、いや。
透き通っている(と言った方が的確な)声。


なによりその声の主を確認した瞬間。

驚き過ぎて、声が詰まった。



「…あー、えぇと。…一大橋ひとつおおはし…・・くん。」
「はい。」
返事と共に、ニッコリ笑う。



一大橋 エルス。
今年の新入生。つまり俺の一つ下の後輩。
図書委員で、帰宅部。
身長は165cm前後。
肌は白くて、綺麗で。
クオーターだか、ハーフだかで、
肩に掛かる程伸ばしている髪は黒いのに、目は青。


下級生の事なのに、俺がこんなに詳しいのには訳がある。


入学式当初から結構話題になっていた。
今年の新入生の中で、一番 可 愛 い と。


…なにもこんな共学の高校で、いくら可愛いからと言って。
男に注目しなくても…!
しかも好意的に!

大丈夫か、みんな…。
勉強のしすぎで頭おかしくなったか?
この学校、実は偏差値高いからな。

いや、まあ、確かに俺も可愛いと思う。
そこらへんの、ぶりっ子アイドルよりは可愛いと思う。多分。
ただ、彼には最大の欠点がある。
デカイ眼鏡。
いや、一部の人には最大の武器とも言えるが。
俺は眼鏡をかけている子を、特別可愛いとは思わない。


にしても、…細い。
こういうのを、華奢っていうんだろうな。
つーか、食ってんのか?それ以前に、俺と同じ男なのか?


「…先輩?」
「え、あっ、はい!」

もしかして俺、百面相してたか?
むしろ、仏頂面だったか!?

「あの、先輩。」
「え、ああはい。」

返事くらいちゃんとしろよ、俺。

「僕も、ここでお昼ご飯を一緒にしてもいいですか?」

昼ごはんに“お”をつけるとは。
俺の返事が言い終わる前に、一大橋は隣に座り、なんとも可愛らしいサイズの弁当箱を取り出した。
俺も、コンクリートの上に放置していた弁当を手に取り、食事を続ける。


別世界の人間だ。

可愛くて、人気があって。そういえば頭も良いらしく。
先生にも、生徒にも好かれてて。いつも誰かと一緒にいる。

それに比べたら。

ルックスまあまあの地味系で、彼女いない歴=自分の生きた年数。(…畜生。)
こんな湿気た場所で、丸い珍妙な生物と会話して。
挙句の果てには、魔女っ子だ。


それにしても、なにもこんな校舎裏の影で、
こんな地味な先輩と(自分で言ってて悲しくなってきた…)、
お昼ごはんを共にするとは。(あ、“お”がうつっている。)


「?そういえば、いつも一緒にいる人達は…?」

気付くの遅いぞ、俺!




「ウザいのでまいて来ました♡」




・ ・ ・ ・ ・ ・ 。


あぁ、俺の中の一大橋という美少年のイメージの何かが崩れた。
きっと彼のファンがこの笑顔(だけ)を見たら、「天使のようだ」と形容するだろう。

新たな彼の一面を見てしまった。
しかし、ほんの少し親近感が沸いたのも事実。
その後も、軽ーーーくイメージが崩れる事もあったが。
美少年ぶりだけは変わらなかった。




「それでは先輩、お昼休みも終わる頃ですし。失礼します。」
「ん、ああ。」

昼休みにも“お”を付けるのか。


「帰り道には気をつけて。」
「…あ、あぁ?」



いや、気をつけなければいけないのは、一大橋の方だろ。
可愛ければ無差別に襲う奴もいるからな、この世の中。










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前回の更新から、相当時間がたっているようなーーーー・・

気がしない事もn(殴。



20080309 加筆修正。