第三話




「あやしいっぷぅ!!」

…さっきからそればっかり。

「うざい。」
「ぷぅっ!?ボクの忠告を無視っするっぷぅうかっ!?」

昼休みに授業中とカバンの奥につっこまれたままだったピンクのプー太郎は、
カバンを開けると同時に飛び出してきた。

人のほとんどいない道を帰宅路にしていてよかった…。

「あのなぁ、どうして一大橋を疑うんだよ?」
「聖夜みたいな地味系に、あんな美少年が寄ってくるなんておかしいっぷぅ!」
「絞めるぞテメェ。」

高校生男子の平均的握力の俺でもこのくらいの生物なら絞める事ぐらいは出来る。(はず。)


それからもプー太郎がプープー言っていたが、もう面倒なので全て無視。

ほとんど毎日通る川沿いの道を、よくも飽きずに歩けるもんだなぁ。
いい加減この川は薄ら汚いし。
いつも小学生くらいのガキ、いやお子様が走り回ったり、
キャッチボールしたりする公園を横目で流していく。



…おかしい。

いつから。いつからこんな。
気付かないで、ここまで帰って来た、いや、
電車に乗った時は。降りる時もいた。

「どうなってんだよ!!」

右足、左足とあわただしく足を出す。
高校生男子の平均速度の記録しか持ってないが。
でもいつもより早い気がする。
そんな事どうだって良い!!

「ぷ?ぷ?聖夜?何あわててるっぷぅ!」

ひどくゆれる鞄にしがみ付いているピンクの生物がノンキな事を言ってやがる!

「気付かねぇのか!?」
「ぷ??」


「誰もいないんだよ!!」


「ぷ・・・・・  ぷぅぅぅぅううううう!!??」

気付くのおせぇよ!

「とにかく、家に…」
ああ、こんなに家が恋しいのは初めてだ。

あのデカイ家のへいを突き当たって、右に曲がれば、キレイな犬を飼ってる家を過ぎて、
それから横断歩道が見えて、
「マジかよ…。」

横断歩道どころじゃねぇ。
キレイな犬と飼ってる家も、向いの小さいパン屋もない。
あのデカイ家の塀を突き当たって右に曲がったのに。

なんというか、
モノクロ画像に、毒々しい紫を無理矢理ぶち込んでグチャグチャにした感じの色彩だ。
そんな色の地面に、空に、
廃墟みたいな壁か、積み木か、よく解らねぇけど、
あるはずの家とかが趣味の悪いオブジェみたいになってやがる。

振り返る。
曲がった道もねぇ。
デカイ家の塀も、趣味の悪いオブジェみたいなのが。

なんだよ、これ。どうなってんだよ!
頼むから夢であってくれ。
あ、そうだ、夢なんだ、これは。
そういえば俺、うとうとしてたよな。
ちょうど良い感じに睡魔が来て、ちょっと寝ようかと思ったところに、
このピンク玉が窓から飛び込んで来たんだ。
窓を開けていて良かった。
もし、窓ガラスを割って入ってきたら、その場で踏み潰しかねない。
そうだよ、そもそもこんな地味な俺にファンタジーとか似合わな過ぎる。
いくらなんでもサプライズし過ぎだろ。
起きろ!起きるんだ、俺!夢から覚めて、はいスッキリ!!


「聖夜、何ボーっとしてるっぷぅ!!」
「今、目覚めようとしてんだよ!」

「何言ってるっぷ!早く変身するっぷぅ!!」

「変身って…」


目の前の光景を見て、絶句。
また俺の知らない内に話が進んでいたんだな。
つか、展開早くないか?
確か昨日、魔女っ子になれって言われたんだぞ?
せめて三日くらい間を開けてだな。

「聖夜、変身するっぷぅ!」
「だああああああああ!もう解ったよ!!」

頭で考えている場合じゃねぇんだ。
夢だとかはこの際、あとで考えて、
ていうか、逃避とうひしたい俺の気持ちも解るよな、俺?
ああ、よく解る。
よし!


とにかく俺は、突如として現れた怪物を倒すため、変身する事にした。



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やっと次回で変身…です…。



20080821 加筆修正。