第四話




変身。他のものに姿を変えること。別の姿・ようすになること。

辞書を引くとこんな感じ。案外簡単に書いてある。


正直、簡単な事じゃねぇだろ。
だって、他のものになるんだぜ?
今の俺で言ったら、一般平均的男子が魔女っ子になるってことだ。
一応、家で変身したが。してみたが。

まさか、本当に変身しないといけない事になるなんて思っていなかった!

これは逃避なんだろうか。
いや、自分の人生の中で、こんなことが起こる可能性を考えてみたら。
 絶 対 あ り え な い 。
これは、逃避というより、可能性の問題だ。


…違う。きっと今こうやって思考にふけっている事が逃避なんだ。


腹をえろ!
目の前の怪物が現実なんだ。
よし。


まずは、ステッキを出す。


「…ステッキ。」


それから、変身呪文。
これはプー太郎の助言に加えて、恥かしくないように、簡単にかなりまとめたもんだ。

「チェンジ、マジカルマスター。」


そしたら、嫌に生暖かい風が包み込んできて、次に目を開けた時には。



完全に、魔女っ子だ。















「…・・。」






やっぱり、ショックすぎる…!



「セイヤ!来るっぷぅ!」
「!!」



変身中ちゃんと待ってくれてる怪物に対して文句言うのもなんだけどな…。
いきなり攻撃はないだろ!!

「きゃあっ!  …・・。」
「どうしたっぷぅ!ちゃんと避けれたっぷぅよ!」
「…いや、この声と自動的に変換される口調に、ショックが…」
「そんな事気にしてる場合っぷぅか!」

そうだけどなぁ!俺の自尊心が…ってそれより。

「くっ!」
第二撃。
本体から伸びている触手みたいなの5・6本が、冗談抜きの馬鹿力で攻撃してくる。
おい、これ当たったら、あの地面みたいに粉々か?
ホントに冗談じゃねぇ!

「!…っ。ぁ!」
「セイヤ、避けてばっかりじゃ、駄目っぷぅ!」
「そう、言われても…。」
くそ、プー太郎め。
自分はふよふよ浮いて、のらりくらりと攻撃の届かないところで見物か!
「攻撃するっぷぅ!」
「…攻撃?」
「セイヤはマジカルマスターっぷぅよ!
 運動能力も反射神経、動体視力、力だって普段とは比べ物にならないくらい強くなってるっぷぅ!」
「そうなの…?」
それを早く言え!
「相手の動きを良く見るっぷぅ。」

よく、見る。
「・・・!」
確かに、見える。
ていうか、なんかこいつ遅い?
いや、ちゃんと見えるから遅く感じるだけか。
それに、動きが単調だ。
なんだ、解ればそんなに怖い相手でもない。
これなら、…いける!

相手の間合いに一気に入る。

「たぁあああっ!!」

少々巨大化したハンマー形のステッキを、思い切り振り上げ、落とした。
一撃!

「※※※※※※※!!!」

なんか、怪物が声ならぬ声を上げたが…。
まあ、いい。利いてるみたいだ。
次!

「はぁああ!!」

二撃、三撃…と、次々攻撃を繰り出す。
その度に怪物が声を上げる。
なんか俺、悪い事してる気がして…、いやいや、やらなきゃやられる。

「セイヤ!そろそろ魔法を使うっぷぅ!」
「あ、」
忘れてた。俺、今魔女っ子なんだ。
「教えた通りにやるっぷぅ!」
「わかった!」


一度、体勢を直す。
怪物はまだぐらついている。
攻撃はかなり利いているみたいだ。

教えられた通りに。
…ちょっとしゃくだけどな。

ステッキを持ち直し、構える。

教えられた攻撃魔法はまだ二つ。
一つは風による広範囲の攻撃。
と言っても、これは攻撃というより翻弄ほんろうに近いらしい。

もう一つは火による、集中攻撃。
敵は一体。
迷う事はない。

「コード、アタック。ナンバー002ゼロゼロニ!」

呪文と共に、ステッキから巻き起こる赤い煙。爆風。
瞬く間に火の玉になり。怪物目掛けて、飛び出した。


「※※※※※※※※※※※※※!!!!!!」

酷い声を上げて怪物が倒れる。
ゆっくり、重い音を立てながら。




「…勝ったの、かな…?」


巨大な怪物はピクリとも動かず、段々薄れていき。
最後は、砂のようにサラサラと空に流れていった。


「やった…。勝った。」





「セイヤ、勝利に浸るのも良いっぷぅが。この空間が消滅する前に、変身をとくっぷ。」
「え、消滅?」
「ここは敵の作りだした空間っぷぅ。敵がやられたらこの空間も消滅するっぷぅ。
 そしたら元の世界に戻るっぷぅが、その時まわりに一般人がいたら、セイヤの変身姿も見ら」
「チェンジ、柳川聖夜!!」

間一髪、どうにか空間が消滅する前に変身を解いた。



いつもの帰宅路だ。
右を見ると、キレイな犬がのんびり寝転んでいる。
向いの小さいパン屋も、いつも通り営業していた。

「戻ってきた…。」
何だか、どっと疲れた気がする。
でも、安堵感の方が大きい。

だけど。
「なぁ、プー太郎。これからも、こんな戦いが続くのか?」
「ぷ?」
間抜けな声出しやがって。
「もちろんっぷぅ。聖夜がマジカルクイーンを倒すまで、戦いはつづくっぷぅ。」

その言葉に、まるでエンディングを飾らなければいけない脚本家みたいなプレッシャーが生まれて、
俺を潰そうとした。

完全に潰れてしまう前に、ピンク玉に返事を返す。
一言だけ。

「…解った。」




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第一戦終了!やったぜ!!


20081230 書き下ろし。