第七話




午後、やる気のない授業中。主に俺が。
これが終われば、ホームルーム後帰るのみ。
あ、帰りに本屋寄ろう。

シャーペンを無駄に握ったりノートを突いてみたり。
数学の方程式が社会に出ていつ役に立つのか解んないまま、まる覚えをする。
きっと何か意味が在るんだと思う。
というか、そうやって信じてないと馬鹿らしくて、青い空の中から一層白い雲をひたすら探してしまいそうだった。

世の中ってどうなってんだろう。
把握しきれないのに、狭いと思うのは何なんだろ。

結局、自分の都合で動かないのに腹を立ててるだけなんじゃねぇかな。




ああー、マジどうでもいい。




終業のチャイムが響くのも、なんかどうでも良くなった。


「・・・・・・。」


今朝の一大橋を思い出す。
俺の方を向きながら、始終楽しそうに何でもない俺の話を聞いていた。
ああいう良い奴だから誰からも好かれるんだろうな。
嫌な感じがしない。
一緒に居て、得した気分にさえなる。
別に何か物品を貰った訳でもないのに。


既に、帰りも一緒だったらいいのに、とか考えてるし。
何俺、気持ち悪!


とか考えてる内に帰りのホームルームが終わった。

さーて帰ろ帰ろ。

そんな都合よく帰りも一緒な訳ない。



荷物をつめる時、やたら静かなプー太郎に違和感を感じて底を見た。

こいつ、寝てやがる…。

死んでないなら良いか。(俺の鞄の中で死んだりしてたら最悪だ。)
こっちの方が静かだから、いっつも寝とけよ。



正門を抜けて、駅に向かう途中にある本屋で少し立ち読みしてから、また駅に向かった。
いい加減雑誌のひとつくらい買えよ俺。
いつもいつも立ち読みで、パッと目を通して終わり。
どうしよ、買って帰るか?いや良いや。

後ろから急ぐ足音が聞こえる。
だんだん近づいてくるから、ゆっくり歩いてる俺は邪魔になると思い、振り向かずに端に寄った。
その足音が何故か直ぐ横で止まった。


「先輩っ!」

「?」

おい、なんだよ。世の中都合よく動いてないはずだろ?


「…一大橋、どうしたんだよ?」
「先輩が見えたの追いかけて来ましたっ。」
「…そっか。」


…別に照れてなんかいないぞ?
やべぇ、こいつ可愛いかも!とか思ってないからな!!!
ホントだからな!!

ヤバイ、俺キモい!!!!!


なるべくこのちょっと嬉しいのを堪えた表情が見えないように、だが自然に見えるように若干顔をそらした。
話題、何か話題はないか!あ、そうだ。

「なぁ、委員会は良いのか?図書委員だろ。」
「大丈夫ですよ。先輩達に、用事があるって伝えたら、先に帰って良いよって、言ってくださいました。」
「用事?こんなトコで話してていいのか?」
「あ、…実は。」
実は?
「…用事、無いんです。」


ちょ!おぉぉおおい!!!

帰りたかっただけかぁ!!!


「良いのか?こんなトコで話してんの誰かに見られたら、何か言われるんじゃないか?」
ここは学校から最寄駅に向かう道だから、同級生とかちらほら歩いてるだろ。
「そうですね。じゃあ先輩、お茶しませんか?」


いやいやいや!聞いてたか、俺の話!
用事があるって言って帰ったのに、俺とどっかに行ってたらサボってるのバレるんじゃあ。

「…良いのか?」
「はい。僕最近気に入ってるカフェがあるんです。そこのケーキとカフェ・モカ、すっごく美味しいんです。あ、パニーニも美味しいですよ。」

・・・・・・・・・・・・・・・何そのお洒落な話題。

俺ついていけるかな?
てか、カフェ・モカってなに?


「先輩、行きましょうっ。」
俺の疑問なんか笑顔でふっ飛ばしちゃうぞ☆くらいにニッコリ笑って先陣を切ろうとする。
「…そこ、学校の奴等に見つかったりしないか?」
「え?」
一大橋は大きな目を尚更大きくして、小首をかしげる。
用事があると言って、俺と遊んでる事がばれたら云々を適当に話した。
すると、またニッコリ笑って心配はいらないという風に、カフェのある駅の話をする。

確かにその駅は、学生がたむろして遊ぶようなトコじゃない。
郊外の住宅街で、しかも、ちょっとお高そうな感じの。


…逆に一大橋がどうしてその駅で降りるのか、何の用があってその駅を使うのか疑問だ。


と思ったが。

駅を降りてカフェに向かう裏路地の道で、一大橋を見た時、考えが変わった。
お洒落な背景と一大橋が、かなりマッチしてる。
きっとここら辺のお洒落な雑貨屋とか古本屋とかに行ってるんだろう。

で、また違う疑問。


…俺、浮いてないか?

若干、挙動不審な目線になる。



一大橋を先導に進んでいくと、いつの間にか街の雰囲気はどこぞの有名アニメ映画の背景みたいになっていた。
レンガの道、蔦の這う壁。心地よく伸びた木々、開放的だが均一に配置された街並みが、何故か懐かしく感じた。
ここなら魔女が箒で飛んでても、猫男爵の人形が売ってる店とかあってもおかしくない。

あちらです、と指差した先にカフェがあった。



うわーーー…・・超レトロ。超雰囲気ある。超お洒落。(何この馬鹿丸出しの感想。)


本当に映画から取ってきたような店構えで、チョークで「Open」と書かれた小さな黒板がドアにぶら下がっている。
迷うことなく開けられたドアの隙間からは、静かにクラシックが流れてきた。



え、俺入るの?入るんだよな?良いのか、俺が入って?(卑屈すぎて涙が出そうだ…!)




そんな俺の心の声が聞こえる訳無く、一大橋は吸い込まれるように店内に入り、俺もそれに続いた。







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昔のを読み返してみると、ちゃんと笑えるところを作ろうと頑張って書いていたのを思い出しました。
もう、すっかりゆるゆるのまったり話に書き方が変わってる…!!あああああああ!!
いや、良いんだ!ここはこの雰囲気が後々の展開に味をだすんだ!!…と言い聞かせてみる(´・ω・`)

20110118 書き下ろし。